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エンジニアリングプラスチック(エンプラ)とは?特性や種類・用途をわかりやすく解説

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プラスチックは一般的に割れやすく、高熱で変形する性質があります。しかし1930年代以降、これらの課題を克服した強度や耐熱性に優れた「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」が開発されました。

エンプラは金属やガラスの代替材料として、日用品から産業機械に至るまで幅広い分野で活躍しています。本記事では、エンプラの基本的な特性や種類、具体的な用途、調達時のポイントをバルカーの高機能樹脂担当スタッフがわかりやすく解説します。

エンジニアリングプラスチックの基本概要

エンプラは一般的なプラスチック(汎用樹脂)より高い強度や耐熱性を持つ高性能樹脂です。この章では、汎用樹脂との違いやエンプラの誕生背景、さらに進化したスーパーエンプラについて解説します。

Classification of Resins

汎用樹脂(プラスチック)との違い

私たちの日常生活で目にするプラスチック製品の多くは、PVC(ポリ塩化ビニル)やPE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)などの汎用樹脂で作られています。汎用樹脂は全合成樹脂の約70%を占め、耐熱温度は100℃未満であり、軽量で加工が容易なため主に日用品に利用されます。

その一方で、エンプラは耐熱温度が100℃以上あり、強度や耐摩耗性にも優れているため、自動車や機械部品といった産業用途に適しています。この特性の違いが、エンプラを「工業用高性能プラスチック」と位置づける理由です。

エンジニアリングプラスチックの定義と特徴

エンプラの特性を正しく理解するためには、プラスチック全般の分類や構造についての基礎知識が必要です。この章ではプラスチックの分類に基づき、エンプラが持つ特性や誕生の背景を順を追って解説します。

Type of resin

熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂

プラスチックは熱を加えた際の反応により「熱硬化性樹脂」と「熱可塑性樹脂」に大きく分類されます。

熱硬化性樹脂は熱を加えると硬化し、再加熱しても形状が変わらないプラスチックであり、電子基板や接着剤などに使用されます。一方で、熱可塑性樹脂は熱を加えると溶け、冷却すると固まる性質を持つプラスチックであり、再成形が可能なため、リサイクル性に優れています。前者はビスケット、後者はチョコレートに例えるとイメージしやすいでしょう。

エンプラは熱可塑性樹脂に該当し、成形加工の自由度や再利用の可能性がある点で高い価値を持っています。

結晶性樹脂と非晶性樹脂について

プラスチックは、炭素原子が鎖状に連なった「鎖状高分子」という化学構造を持っています。この構造により、分子鎖はある程度柔軟に動くことができますが、常温では分子同士が絡み合い、単独で動くことはほとんどありません。一方で、高温になると分子が活発に動き出し、分子間の規則性が失われるため、プラスチックは溶けてしまいます。

冷却時、分子鎖が規則的に並ぶと「結晶」が形成され、このような特性を持つプラスチックを「結晶性樹脂」と呼びます。一方で結晶を形成せず、分子が不規則に配置されるものは「非晶性樹脂」に分類されます。

  • 結晶性樹脂:分子間力が強く、耐摩耗性や機械的強度に優れていますが、透明性が低い
    • エンプラ:PA(ポリアミド) , POM(ポリアセタール) , PBT(ポリブチレンテレフタレート)
    • スーパーエンプラ:PPS(ポリフェニレンサルファイド) , フッ素樹脂(PTFE , PFA , FEP , E / TFE , PVDF等) , PEEK(ポリエーテルエーテルケトン) , LCP(液晶ポリマー)
  • 非晶性樹脂:透明性が高く、塗装や接着がしやすい性質を持ち、成型時の収縮も少ないため、精密な加工に適している
    • エンプラ:PC(ポリカーボネート) , mPPE(変性ポリフェニレンエーテル)
    • スーパーエンプラ:PSF(ポリサルホン) , PES(ポリエーテルサルホン) , PAR(ポリアリレート) , PAI(ポリアミドイミド) , PEI(ポリエーテルイミド)

このように、結晶性樹脂と非晶性樹脂は分子構造の違いによって異なる特性を持つため、エンプラでも用途に応じて使い分けられています。

エンジニアリングプラスチックが生まれた経緯と背景

エンプラの歴史は、1930年代に米国デュポン社が繊維素材としてPA(ポリアミド)の製造を開始したことから始まります。第二次世界大戦中、金属不足の解決策としてエンプラが開発され、戦後にはその利便性が一般産業にも広がりました。現在では、金属代替材料として多くの分野で欠かせない存在となっています。

汎用エンプラとスーパーエンプラの性能・用途の違い

エンプラはその誕生以来、金属代替材料としての需要が高まり続けています。特に耐熱性や難燃性へのさらなる要求を受けて、1947年には米国デュポン社がスーパーエンプラと呼ばれるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を開発・販売しました。

スーパーエンプラは高分子材料や補強繊維と複合化されたことで、従来のエンプラを超える性能を実現しています。特に150℃以上の高温環境での連続使用にも耐えるほか、卓越した強度や耐薬品性を備えています。このため、厳しい条件が求められる産業分野や特殊用途で広く採用されています。

エンジニアリングプラスチックの主な種類と特性

エンプラには多くの種類があります。ここでは特によく使われている代表的な種類を紹介します。

材質名 軽量性 吸水性 耐熱性 低温物性 強靭性 耐クリープ性 耐溶剤性 耐候性 難燃性 電気特性 耐摩擦・摩耗性 コスト 主な用途例
スーパーエンプラ PTFE ◎(~260°C) 化学プラントのガスケット・パッキン、高電圧ケーブル被覆材、軸受け
PBI ◎(~400°C) × 高温バルブシートやOリング、自動車エンジン部品、高温プラズマ環境で使用される絶縁材料
PEEK ◎(~343°C) × 航空宇宙部品(シール材、ベアリング)、医療機器(手術用器具)、半導体製造装置、自動車エンジン部品
PI ◎(~300°C) × 航空宇宙産業の断熱材、高温電子基板材料、半導体製造装置の絶縁部品
PPS ◎(~260°C) 自動車エンジン部品(燃料ポンプ)、半導体製造装置部品、化学プラントのバルブやポンプ部品
PFA ◎(~260°C) × 半導体製造プロセス用配管・バルブ、医療用カテーテルや人工血管、高温化学薬品搬送管
PCTFE ○(~150°C) × 航空宇宙産業の燃料システムシール材、半導体製造装置のインシュレータ、医薬品包装材
PEI ◎(~217°C) × 医療機器(滅菌トレイ)、航空宇宙機器(配線ハウジング)、電子機器基板、自動車ランプリフレクター
PSU ◎(~190°C) 医療用生体膜代替品(人工腎臓)、食品容器、自動車ランプハウジング、電子機器コネクタ
PVDF ○(~150°C) ケーブル被覆材、防水膜や外壁パネル、高温化学薬品配管、水処理フィルター
汎用エンプラ PA66 × ○(~150°C) 工業用ファスナー、配線コネクタ、自動車部品(ホース、ギア)、電気絶縁部品、繊維(衣料品やカーペット)
PC ○(~130°C) × 防弾ガラス、ヘルメットバイザー、自動車ヘッドライトカバー、電子機器ケース(スマートフォンやノートPC)、光学ディスク
MCナイロン × △(~120°C) × × 軸受け、歯車、ライナー、自動車部品(ホイールやシーブ)、工業用パイプ
POM △(~110°C) × × 歯車、ベアリング、スナップフィット部品、自動車部品(窓レギュレーター)、精密機械部品(時計ギア)
PA6 × △(~120°C) 歯車、ベアリング、ロープ、フィルム、食品包装材、自動車部品(エンジンカバー、燃料タンク)
UHMWPE △(~80°C) × スライダーやライナー、高耐久性ベルトコンベア、自動車燃料タンクライナー、防弾チョッキ
ABS △(~100°C) × 家電製品(テレビ筐体、冷蔵庫部品)、自動車内装部品、玩具(レゴブロック)、工業用カバー、パイプ継手

エンジニアリングプラスチックの主な用途

エンプラは、私たちの暮らしや社会のあらゆる場面で利用されています。以下に具体的な使用例を分野別に紹介します。

自動車産業におけるエンプラの用途

エンプラは自動車の多くの部品に欠かせない素材です。たとえば、レーダーのカバーなどの光学系部品には透明性と耐衝撃性に優れたPC(ポリカーボネート)、ワイパーなどの摺動部品には耐摩耗性が高いPOM(ポリアセタール)が使用されています。

さらにスイッチやコネクターなどの電装系部品には絶縁性が高いPET(ポリエチレンテレフタレート)、燃料系統には耐熱性と耐薬品性を兼ね備えたPPS(ポリフェニレンサルファイド)が採用されています。

航空機産業におけるエンプラの用途

航空機では、従来金属が使われていた部品にエンプラが活用されています。たとえば、内装パネルやボルトには軽量かつ高強度のPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)が使用されています。これにより、機体の軽量化が進み、燃費の向上に大きく貢献しています。

電子・電気機器分野におけるエンプラの用途

最近では、エンプラは電子機器や電気機器の精密部品にも幅広く使用されています。半導体の製造現場では、ウェハにパターン回路を形成する工程で薬液(強酸や強アルカリ)に触れる機会が多くあります。

この際、薬液に微量でも不純物が混入するとウェハ上の微細な回路パターン形成の障害となり、不良品が発生します。薬液の不純物混入を防ぐために、タンクや配管、バルブの内側に耐薬品性の高いPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が内張りされています。

医療分野におけるエンプラの用途

医療分野でもエンプラは重要な役割を果たしています。たとえば、カテーテルやポンプなどのオートクレープ(高圧蒸気滅菌器)を通す器具には、耐熱性・耐薬品性に優れたPEI(ポリエーテルイミド)、人工関節には化学的に安定していて機械的に強靭なPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)が使用されています。

また哺乳瓶には、ガラスの代替として透明でありながら耐久性にも優れたPSU(ポリスルホン)が採用されています。

家電製品におけるエンプラの用途

家電分野でもエンプラの特性は重宝されています。電気系統のスイッチやコネクターには、ほぼ必ずエンプラが使用されており、耐熱性や電気特性に優れたSPS(シンジオタクチックポリスチレン)は電子レンジや炊飯器の重要な部品に用いられています。

食品関連・日用品分野におけるエンプラの用途

食品や日用品にも、エンプラの機能性が活かされています。割れにくく食器乾燥機の熱にも強い特性から、食器や調理器具の素材として使われています。

またPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、優れた耐熱性と非粘着性によって、炊飯器の内釜やフライパンのコーティングに用いられており、耐久性の高さとさまざまな食材や汚れの付きにくさを提供します。

工業分野におけるエンプラの用途

エンプラは工業用部品としても多くの用途に使われています。ギアやベアリング、ベルトコンベアなどの摺動部品には、別名ナイロンとも呼ばれる耐摩耗性に優れたPA(ポリアミド)が採用されています。

またベルトコンベアやシール材には、柔軟性と耐摩耗性を兼ね備えたPU(ポリウレタン)、耐薬品性と耐熱性が必要な化学プラント部品にはPSU(ポリスルフォン)が使用されています。それぞれの特性に応じた最適な用途によって、工業用部品の性能向上や機械の効率向上、長寿命化に寄与しています。

エンジニアリングプラスチックの加工方法

エンプラは、その優れた特性を生かすために多様な加工方法が用いられています。この章では、代表的な加工技術について解説します。

射出成形

インジェクション成形とも呼ばれる加工方法で、金型に溶かしたプラスチックを射出して冷却・固化させます。同じ形状の製品を大量に生産するのに適しており、自動車部品や電子機器の外装部品など幅広い製品で活用されています。

射出成形では、製品の形状や素材によってゲート設計や冷却速度の調整が重要であり、最終製品の品質に大きく影響します。

押出成形

押出成形は、ところてんのように、金型の押し出し口から溶かしたプラスチックを押し出して成形する方法です。断面形状が一定の製品を大量に作るのに適しています。

パイプやチューブ、フィルムの製造で広く用いられ、多層構造を持つ製品を製造することも可能です。押出速度や冷却のバランスが製品の精度を左右するため、細やかな調整が求められます。

切削加工

切削加工では、板材や棒材に圧縮成形した素材を機械で削り出し、目的の形状に仕上げます。射出成形では対応が難しい複雑な形状の部品や、少量生産の試作品に最適です。

近年では、コンピュータ数値制御技術を使用したCNC加工(Computer Numerical Control Machining)が主流となっており、複雑な三次元形状も効率的に高精度で加工できます。また、歪みやバリが出にくい点も大きな特徴です。

ブロー成形

ブロー成形は溶かしたプラスチックを型に入れ、空気を吹き込んで膨らませる加工方法です。中身が空洞の軽量製品に適しており、ペットボトルや化粧品の容器、燃料タンクなどの製造に活用されています。

真空成形

真空成形ではプレート状のプラスチック素材を加熱し、凹凸のある型に密着させて成形します。薄くて軽量な製品に適しており、卵のパックやバスタブ、家電製品の外装などが代表例です。

エンジニアリングプラスチックのメリット・デメリット

エンプラは金属や汎用プラスチックでは実現できなかった特性を備えており、多くのメリットを提供します。しかし、用途や環境によっては注意が必要なデメリットも存在します。この章では、エンプラの特性をメリットとデメリットに分けて解説します。

エンジニアリングプラスチックのメリット

エンプラの主なメリットを以下に挙げ、それぞれの特徴を詳しく説明します。

軽量で取り扱いやすい

エンプラは金属に比べて軽量で、同じ体積でも重量を大幅に削減できます。これにより、作業負担の軽減や輸送コストの削減が可能です。さらに自動車や航空機では、軽量化による燃費向上にも寄与します。

大量生産とコスト削減が可能

射出成形などの加工技術を用いることで、大量生産が容易になります。金属に比べて原材料費が安価であり、製造プロセスの効率化を実現できます。

種類が豊富で用途に応じた選択肢がある

耐熱性だけでなく耐薬品性や絶縁性など、エンプラは用途に応じた多様な特性を持つ材質があります。これにより産業機械や自動車、電子機器など、幅広い分野での利用が可能です。

摩擦を抑え、潤滑性に優れる

摩擦係数が極めて小さいため、潤滑油を使用しなくてもスムーズな回転運動・直線運動を実現します。また機械部品の摩耗を軽減し、長寿命化にも寄与します。

着色や透明な仕上がりが可能

エンプラは自由な着色が可能で、塗装が不要になる場合も多く、製造工程を短縮できます。また透明性を持つエンプラもあり、用途に応じたデザイン性を提供します。

複雑な形状や特殊な機能性を実現できる

金属では、複数の部品を繋げなければ複雑な形状を成形することは難しい一方で、エンプラであれば切削加工や射出成形を駆使することで、複雑な形状を一体成形で作ることが可能です。

また、グラスファイバーやカーボンを混ぜた充てん材入りであれば、強度や耐久性を向上させた高機能エンプラも製造できます。

エンジニアリングプラスチックのデメリット

一方で、エンプラにはいくつか課題も存在します。特定の用途では慎重な検討が必要です。

強度や耐熱性が金属に劣る

エンプラは金属の代替材料として優れていますが、強度や耐熱性、耐火性に関しては金属には及びません。高負荷や高温が予想される環境では、金属製品が適する場合があります。

燃焼時に有害物質が発生する場合がある

一部のエンプラは燃焼時に有害物質を発生させることがあります。環境や人体への影響に配慮した安全なエンプラの開発も進んでいますが、廃棄時には適切な処理が求められます。

高荷重による変形のリスクがある

エンプラは長期間の荷重や高負荷によって変形が生じる可能性があります。調達の前に、使用する環境や荷重条件を事前に考慮することが重要です。

紫外線や薬品による劣化のリスクがある

紫外線や油脂、水などにさらされることで劣化が進む場合があります。これにより寸法変化が生じる可能性があるため、定期的な保守や予防措置が必要です。

接着が難しい場合がある

一部のエンプラは接着性が低い特性を持っています。エンプラ同士、あるいは他の素材とは接着しにくいなどさまざまです。専用の接着剤の使用や切削加工による一体成形など、代替手段を検討する必要があります。

エンジニアリングプラスチック調達時の選定ポイント

エンプラを調達する際には、用途や条件に応じた適切な選定が必要です。以下のポイントを基準に判断することで、効率的で効果的な調達が可能になります。

部品や製品の要件を明確化する

エンプラには多種多様な種類があり、用途や環境に応じて最適な選択を行う必要があります。またエンプラの特性を理解し、不適切な使用を避けることが重要です。以下の要件を事前に整理することで、選定の精度が向上します。

  • 使用温度:耐熱性の適合を確認
  • 荷重:必要な機械的強度を満たすか検討
  • 部品に接触する流体:気体や液体、薬品による変形を考慮
  • 電気特性:絶縁性や導電性の有無を確認

これらの条件に合ったエンプラを選ぶことで、製品の性能を最大限に引き出せます。

コストと費用対効果を検討する

エンプラは汎用樹脂に比べて高価ですが、その性能は投資に見合う価値を提供します。ただし、サプライヤーごとに品質や価格が異なるため、計画的なコスト管理が重要です。

具体的には、以下の視点で検討してください。

  • 品質(Quality):安定した性能が得られるか
  • コスト(Cost):予算内で効率的に調達可能か
  • 納期(Delivery):供給がスムーズに行われるか
  • 安全性:燃焼時の有害物質や環境影響を配慮

QCDと安全性を総合的に評価し、調達が経済的かつ実用的であるかを確認することが重要です。

信頼できるサプライヤーを選ぶ

適切なサプライヤーの選定は調達の成功に直結します。品質保証が確立され、供給の安定が見込めるサプライヤーを選ぶことで、リスクを最小限に抑えることができます。

信頼性の高いサプライヤーを選定する際のポイントは以下の通りです。

  • 経験豊富で知見があるか
  • 使用環境や目的に応じた適切なアドバイスを提供できるか
  • 納期の管理やトラブル対応が迅速か

信頼できるパートナーを選ぶことで、調達業務がスムーズになり、製品品質も向上します。

エンジニアリングプラスチックの取り扱い上の注意点

エンプラは優れた特性を持つ一方で、使用環境や条件によってはトラブルが生じることがあります。以下に、加工・保管・使用時に実際に報告された事例とその原因について説明します。

これらは非常に稀なケースですが、事前に理解しておくことで対策が可能です。使用環境を正確に把握し、適切なエンプラの選定や保管・管理を徹底することが重要です。製品設計や製造段階で事前にリスクを洗い出し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けるとより安心です。

高湿環境による寸法変化

高湿な環境に長期間さらされると、エンプラが吸湿し、寸法が変化する場合があります。特にポリアミド系樹脂(ナイロン)は吸水性が高いため、設置場所の湿度管理が重要です。

高温環境による線膨張

高温条件での使用時に線膨張が発生し、部品同士のクリアランスが変化することがあります。耐熱性を持つエンプラを選定し、適切な設計を行う必要があります。

薄肉部品での反り発生

薄いエンプラを使用した際に、成形や使用環境の影響で反りが生じる場合があります。材料の選択や成形プロセスの最適化が対策として有効です。

紫外線による劣化

紫外線に長期間さらされると、エンプラが劣化し、表面が欠けたりひび割れが生じることがあります。屋外での使用には、UVカット加工を施したエンプラを選ぶのが推奨されます。

薬品接触による劣化

耐薬品性のないエンプラを薬液にさらすと、化学的な反応で劣化が進む場合があります。薬品と接触する部品には、耐薬品性を備えたエンプラを選定することが重要です。

荷重による変形(クリープ現象)

長期間荷重がかかると、エンプラが徐々に変形する「クリープ現象」が発生します。設計段階で荷重分散を考慮するか、高強度のエンプラを選ぶことでリスクを低減できます。

静電気による火花発生と引火

エンプラは静電気を帯びやすく、火花が散ることで引火事故の原因となる場合があります。特に燃料が近い環境では、帯電防止対策を講じることが必須です。

エンジニアリングプラスチックの最新動向と市場展望

エンプラは産業用途を中心に世界中で需要が拡大しています。この章では、エンプラ市場の成長予測や新たな技術開発、環境への配慮について解説します。

市場規模と成長予測

エンプラ市場は国内外での産業発展に伴い、今後も成長が見込まれています。特に自動車の軽量化や電装化、半導体製造の需要増加が市場を牽引しています。

富士経済の調査によると、エンプラとスーパーエンプラの世界市場は2027年に1,237万トンに達する見通しです。これは2021年と比較して15.7%の増加を示しており、エンプラが引き続き重要な役割を果たしていくことを裏付けています。

出典:富士経済グループ / プレスリリース第22117号

環境対応型エンプラの開発

従来のエンプラは主に石油資源を原料としていますが、環境負荷軽減の観点から、代替原料の使用が進んでいます。代表例として、バイオマス由来のエンプラが挙げられます。これにより、二酸化炭素排出量の削減や資源の循環利用が期待されています。

環境省は2019年に「プラスチック資源循環戦略」を策定し、プラスチック製品をバイオマスプラスチックへ置き換える取り組みを推進しています。目標として、2030年までに最大200万トンのバイオマスプラスチック導入を掲げています。

出典:環境省 / プラスチック資源循環戦略について

環境への配慮とリサイクル技術の進展

エンプラの需要が増える一方で、廃棄される量も増加しています。環境への配慮として、樹脂のリサイクルに対する考えも活発化しており、以下の3つの方法が広く活用されています。

マテリアルリサイクル

材料リサイクルとも呼ばれるリサイクル法で、エンプラを破砕・溶解し、同じ用途の原料として再利用する方法です。比較的単純なプロセスで実施でき、循環型社会の実現に貢献します。

ケミカルリサイクル

化学分解によってエンプラを原料の状態に戻し、新たな製品に再利用する方法です。この技術は特に、複雑な形状や混合素材を含む製品に有効です。

サーマルリサイクル

エンプラを燃料として焼却し、熱エネルギーや発電に利用する方法です。エンプラのリサイクルが難しい場合に適用され、エネルギー回収の手段として有効です。

出典:一般社団法人プラスチック循環利用協会 / マテリアルリサイクル

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編集者

バルカー編集部

カテゴリー

エンジニアリングプラスチック

タグ

PTFE, エンジニアリングプラスチック, スーパーエンプラ, 樹脂, 高性能樹脂

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