ふっ素樹脂とは?種類・特性・用途別の選び方を徹底解説

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ふっ素樹脂に対して「テフロンとの違いは?耐熱性や耐薬品性は?どの材質が最適なのか?」などの疑問を持っていませんか?ふっ素樹脂には複数の材質があり、それぞれ特性が大きく異なります。間違った材質を選定してしまった場合、それぞれの特性を活かしきれずトラブルの原因になることがあります。

そこで本記事では、当社バルカーの高機能樹脂担当スタッフがふっ素樹脂の種類と特性をわかりやすく解説し、適切な材質の選び方や加工方法についても詳しく紹介します。バルカーが長年培ってきた知見をもとに正しい選定基準を解説しますので、ぜひ参考にしてください。

ふっ素樹脂の基本概要について

ふっ素樹脂はふっ素原子を含む高機能性の合成樹脂を指し、優れた耐熱性・耐薬品性・低摩擦性を備えた材質として知られています。半導体・航空宇宙・医療・食品産業など、高い耐久性と特殊な性能が求められるさまざまな分野で幅広く活用されています。

そんなふっ素樹脂の特徴として、温度による影響や腐食性の強い化学薬品の影響を受けにくいことが挙げられます。これは化学的に非常に安定している炭素(C)とフッ素(F)の強固な結合による特徴です。

また、ふっ素原子が分子の表面に多く配置されているため非常に低い表面エネルギーを持つことで非粘着性や撥水性に優れるという特性もあります。この特性は、調理器具のテフロン加工や汚れにくい医療機器、電子部品などに活用されています。

ちなみに、ふっ素樹脂とテフロンの違いは「一般名称」と「商標」の違いです。「テフロン™」は後述するふっ素樹脂の1材質、PTFEにおける米デュポン社(現ケマーズ社)の登録商標として広く認知されています。

ふっ素樹脂の種類について

材質(略称) 材質(正式名称) 材質(日本語名称)
PTFE ポリテトラフルオロエチレン 四ふっ化エチレン樹脂
PFA パーフルオロアルコキシアルカン 四ふっ化エチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂
FEP パーフルオロエチレンプロペンコポリマー 四ふっ化エチレンー六ふっ化プロピレン共重合樹脂
ETFE エチレンーテトラフルオロエチレンコポリマー 四ふっ化エチレンーエチレン共重合樹脂
PVDF ポリビニリデンフルオライド ふっ化ビニリデン樹脂
ECTFE エチレンークロロトリフルオロエチレンコポリマー 三ふっ化塩化エチレンーエチレン共重合樹脂
PCTFE ポリクロロトリフルオロエチレン 三ふっ化塩化エチレン樹脂
TFE / PDD テトラフルオロエチレンーパーフルオロジオキソールコポリマー 四ふっ化エチレン・パーフルオロジオキシソール共重合樹脂
PVF ポリビニルフルオライド ふっ化ビニル樹脂

ふっ素樹脂にはさまざまな種類があり、それぞれ化学構造や特性が異なるため用途によって最適なものを選ぶことが重要です。ふっ素樹脂は大きく分けると、以下3つの分類に分けられます。

  • 完全ふっ素化樹脂
    • 分子構造のすべての炭素結合がふっ素原子で置換されている樹脂
    • 耐薬品性・耐熱性・電気絶縁性が非常に高いが、成形が難しい
    • 例:PTFE、PFA、FEPなど
  • 部分ふっ素化樹脂
    • 炭素結合の一部がふっ素で置換されている樹脂
    • 機械的強度や耐摩耗性に優れるが、完全ふっ素化樹脂より耐薬品性はやや低く、耐摩耗性が求められる用途に適する
    • 例:ETFE、PVDFなど
  • ふっ素化樹脂共重合体
    • 異なるモノマーを組み合わせた共重合体で特性のバランスが良く、加工性も高いので複雑な形状の部品にも適応可能
    • 例:ECTFE、TFE / PDDなど

ふっ素樹脂は「どれも同じ」と思われがちですが、実際には材質によって特性が大きく異なるので適材適所によって選定する必要があります。たとえば、耐熱性がもっとも高い材質はPTFEですが、溶融粘度が高い特性によって射出成型や押出成形ができないため、射出成形・押出成形が可能なPFA・FEPなどのふっ素樹脂で代替することがあります

また、ETFE・PVDF・PCTFEは機械的強度に優れるため、構造部品や耐摩耗性が求められる用途で選ばれます。

Fluorocarbon polymers position in the hierarchy of resins, based on heat resistance and material properties

このように、ふっ素樹脂は材質ごとに特性に違いがあるため用途に応じた選定が不可欠です。各ふっ素樹脂の詳細については、後述する次の章の各一覧表をご参照ください。

ふっ素樹脂の特性とメリットを徹底比較!最適な材質の選び方

ふっ素樹脂は非粘着性・表面特性(撥水・撥油)・低摩擦特性・耐薬品性・耐熱性・電気絶縁性・耐候性・難燃性など、数多くの優れた特性を持つ高機能樹脂です。その一方で、材質によって特性に違いがあるため用途ごとに最適な樹脂を選ぶことが重要です。

この章では、物理的特性・機械的特性・熱的特性・電気的特性・その他の特性に項目を分けて、それぞれのメリットと材質ごとの違いについて詳しく解説します。各特性を比較しながら、用途に適したふっ素樹脂の選び方を確認していきましょう。

物理的特性のメリットとは?材質ごとの違いを解説

ASTM試験法 PTFE PFA FEP ETFE PVDF ECTFE PCTFE
融点(℃) 327 310 260 270 156-170 245 220
比重(g / ㎤) D792 2.14-2.20 2.12-2.17 2.12-2.17 1.70 1.75-1.78 1.68-1.69 2.1-2.2

ふっ素樹脂はその比重(密度)と融点によって物理的特性が異なり、用途ごとに適した材質を選定することが重要です。

たとえば、軽量で機械的強度のバランスが良いETFEやECTFEは構造部品向きですが、耐熱性が求められる場合はPTFEやPFAが最適です。これらの物理的特性の違いは耐久性や加工性にも影響を与えるため、適切な選定が求められます。

機械的特性のメリットとは?材質ごとの違いを解説

ASTM試験法 PTFE PFA FEP ETFE PVDF ECTFE PCTFE
引張強さ(MPa) D638 27.4-34.3 24.5-34.3 21.6-31.4 45.1 34.3-43.1 48 30.9-41.2
伸び(%) D638 200-400 300 250-330 100-400 80-300 200-300 80-250
圧縮強さ(MPa) D695 11.8 16.7 15.2 49 66.6-96 31.4-51
衝撃強度(J / m) D256A 160 破壊せず 破壊せず 破壊せず 160-374 破壊せず 133-144
硬さ / ロックウェル D785 R50 R77-83 R75-95
硬さ / ショアー D2240 D50-55 D60 D55 D75 D75-77 D55
曲げ弾性率(MPa) D790 550 660-690 650 1400 2000-2480 660-690
引張弾性率(MPa) D638 400-550 340 820 1310-1500 1030-2100
動摩擦係数(MPa) 0.69MPa
3m / min
0.10 0.2 0.3 0.4 0.39 0.37

ふっ素樹脂は材質ごとに引張強さや伸び・圧縮強さ・衝撃強さなど、機械的特性にも違いがあるため使用する環境や求める性能に応じた選定が必要です。

たとえば、PTFE・PFAは圧縮強さに劣る一方で、伸びが大きく柔軟性に優れているためシール材やチューブに向いています。

熱的特性のメリットとは?材質ごとの違いを解説

ASTM試験法 PTFE PFA FEP ETFE PVDF ECTFE PCTFE
熱伝導率(W / (m・K)) C177 0.25 0.25 0.25 0.24 0.10~0.13 0.16 0.20~0.22
比熱(J / (g・K)) 1.0 1.0 1.2 1.9-2.0 1.4 0.92
線膨張係数(10⁻⁵ / ℃) D696 10 12 8.3-10.5 5.9 7-14 8 4.5-7.0
ボールプレッシャー温度(℃) 180 230 170 185 170
熱変形温度 1.81MPa(℃) 55 50 55 74 87-115 77
熱変形温度 0.45MPa(℃) 121 74 72 104 149 116 126
最高使用温度(℃) (無荷重) 260 260 200 150-180 150 165-180 177-200

ふっ素樹脂は熱伝導率や比熱・線膨張係数・耐熱性(最高使用温度・熱変形温度)などの熱的特性も異なり、用途ごとに長寿命化・耐久性を意識した適切な材質の選定が求められます。

たとえば、耐熱性を重視するなら最高使用温度がもっとも高いPTFEやPFA、寸法安定性を求めるなら線膨張係数が比較的安定しているPCTFEが適しています。

電気的特性のメリットとは?材質ごとの違いを解説

ASTM試験法 PTFE PFA FEP ETFE PVDF ECTFE PCTFE
体積抵抗率(Ω-cm) D257(50% RH.23℃) >10¹⁸ >10¹⁸ >10¹⁸ >10¹⁶ 2×10¹⁴ >10¹⁸ 1.2×10¹⁸
絶縁破壊の強さ(kV / mm) D149 19 20 20-24 16 10 20 20-24
誘電率 / 60Hz D150 <2.1 <2.1 2.1 2.6 8.4 2.6 2.24-2.8
誘電率 / 10³Hz D150 <2.1 <2.1 2.1 2.6 8.4 2.6 2.3-2.8
誘電率 / 10⁶Hz D150 <2.1 <2.1 2.1 2.6 6.43 2.6 2.3-2.5
誘電正接 / 60Hz D150 <0.0002 <0.0002 <0.0002 0.0006 0.049 <0.0005 0.0012
誘電正接 / 10³Hz D150 <0.0002 <0.0002 <0.0002 0.0008 0.018 0.015 0.023-0.027
誘電正接 / 10⁶Hz D150 <0.0002 0.0003 <0.0005 0.005 <0.015 0.009-0.017
耐アーク性(s) D495 >300 >300 >300 75 50-70 18 >360

ふっ素樹脂は体積抵抗率や絶縁破壊の強さ・誘電率・誘電正接・耐アーク性などの電気的特性にも各材質ごとに違いがあり、電気絶縁性能や高周波特性などを意識して最適な材質を選ぶことが重要です。

たとえば、高い電気絶縁性能を求めるなら体積抵抗率が高いPTFEやPFA、高周波特性を重視するならPTFEが適しています。

その他特性のメリットとは?材質ごとの違いを解説

ASTM試験法 PTFE PFA FEP ETFE PVDF ECTFE PCTFE
吸水率 / 24h(%) D570 <0.01 <0.03 <0.01 0.029 0.04-0.06 0.01 0.00
燃焼性 / 3.2mm厚 (UL-94) V-0 V-0 V-0 V-0 V-0 V-0 V-0
限界酸素指数 D2863 >95 >95 >95 30 44 60 >95
直射日光の影響 なし なし なし なし なし なし なし
アルカリ
溶剤

ふっ素樹脂は吸水率や難燃性・耐候性・耐薬品性など、その他特性においても優れた性能を発揮します。

たとえば吸水率を比較すると、湿度が影響する精密部品や電子機器にはPCTFEが適しています。また、すべての材質がV-0相当の難燃性の特性があります。耐薬品性に関しては、PTFE・PFA・FEPが化学薬品全般に対する耐性が極めて高く産業用途に有効です。

ふっ素樹脂の注意すべき弱点と対策を解説

ふっ素樹脂は優れた耐熱性や耐薬品性・低摩擦性などの特性を持つ高機能樹脂ですが、一方で以下7つのデメリットも存在します。用途によっては適切な設計や加工方法を検討する必要があります。

Weaknesses of fluorocarbon polymers, including heat resistance, cost, and processing challenges.

1. 変形しやすいため、荷重による変形を考慮する

ふっ素樹脂は高温環境での耐久性に優れる一方で、機械的強度が低いため変形しやすいという課題があります。特にPTFEは引張強度が低く、高負荷のかかる部品には向きません。

ふっ素樹脂の機械的強度を補う方法として、ガラス繊維・カーボン・ブロンズなどの充てん材を添加することで強度を向上させる対策が有効です。

2. 磨耗しやすいため、摩耗耐性が高い材質の選定が重要

ふっ素樹脂は低摩擦特性が強みですが、その反面、長時間の摺動(摩擦)による摩耗が起こりやすいという欠点があります。そのため、摺動部品では充てん剤を添加して耐摩耗の対策が必要です。

ふっ素樹脂を摩耗しにくくする方法として、PCTFEやPVDFなどの摩耗耐性が高い材質を選定することも有効な手段といえるでしょう。また、摺動部品ではガラス繊維などの強化材を充填することも対策の一つに挙げられます。

3.接着性が低いため、表面処理で対策

ふっ素樹脂は表面エネルギーが極めて低いため、接着剤での固定が難しく、密着性が低いことも注意しておきましょう。

ふっ素樹脂に接着を必要とする場合は、対策としてプラズマ処理を行ったり、特殊プライマーを使用する必要があります。

4. 成形性が低いため、用途や予算に応じた材質の選定が重要

PTFEなど一部のふっ素樹脂は、一般的な射出成形が難しいため特殊な加工技術が必要です。

成形性を改善する手段として、PFAやFEPなどの比較的成形性が良い樹脂を選定することが有効です。ただし、これらのふっ素樹脂は加工コストが高くなるため、用途や予算に応じた選定が重要です。

5. コストが高いため、代替可能なエンジニアリングプラスチックを検討

ふっ素樹脂は製造プロセスが複雑かつ原料コストが高いため、他のエンジニアリングプラスチックと比べても価格が高い傾向にあります。特にPTFEやPFAは高価な部類に入り、大量生産用途ではコスト面の考慮が必要です。

ふっ素樹脂のコストを抑える方法として、用途ごとに最適な材質を選定し、不必要な高グレードの樹脂を避けることでコスト削減が可能です。また、代替可能なエンジニアリングプラスチックを検討することも一つの手段といえます。

6. 高温加工時のガス発生には、安全な作業環境の確保が重要

ふっ素樹脂を高温(約260℃以上)で加工すると、分解して有毒なガス(ふっ素ガス)が発生する可能性があります。

特にPTFEやPFAを加熱するとガスが発生しやすいため、適切な換気設備のある環境での加工が必要です。工場や作業現場では排気装置や防毒マスクの使用を推奨します

7. リサイクルが難しいため、環境負荷を考慮した対応を念頭に

ふっ素樹脂は耐薬品性・耐熱性が極めて高い反面、リサイクルが難しく、廃棄の際に特殊な処理が必要になるという課題があります。そのため、環境負荷を考慮した設計が求められています。

ふっ素樹脂のリサイクル対策として、廃棄時には専門業者のリサイクルシステムを活用し、適切に処理することを意識しておきましょう。

ふっ素樹脂の主な用途と産業での活用例

ふっ素樹脂は優れた耐熱性・耐薬品性・低摩擦性・電気絶縁性などの特性を活かし、幅広い産業で利用されています。特に、半導体・電子機器産業や医療・製薬産業、化学・プラント産業、航空宇宙・自動車産業、食品産業など、現代において高い品質・安全性が求められる各分野で必要不可欠な素材です。

材質 産業分野 主な用途
PTFE 半導体・化学プラント・航空宇宙など ケーブル絶縁材・ガスシール・耐薬品タンクなど
PFA 半導体・医療・化学プラントなど 半導体製造装置・医療用チューブ・ライニングなど
FEP 電子機器・医療・通信など 光ファイバー被覆・医療フィルター・電気絶縁材など
ETFE 航空宇宙・自動車など 軽量構造部品・燃料ホース・電線被覆など
PVDF 医療・化学プラント・食品産業など フィルター膜・化学タンク・耐薬品チューブなど
ECTFE 化学プラント・建築など タンクライニング・防食コーティングなど
PCTFE 航空宇宙・電子機器など 精密バルブ・ガスバリア部品など

前述の章でも解説した通り、材質ごとに特性が異なるため用途に適した選定が重要です。

たとえば、PTFEは半導体・化学プラント・航空宇宙分野でもっとも多く使われるふっ素樹脂です。特に、耐薬品性と電気絶縁性を活かしてケーブル絶縁材や化学タンクのライニングなどに活用されています。また、低摩擦特性を活かして摺動部品やシール材にも使われています。

PFA・FEPはPTFEと同様の耐薬品性を持ちながらも成形性に優れており、また透明性も高いため、半導体製造装置の配管や医療用チューブ、フィルターなどに使用されています。特に、高純度が求められる環境での使用に適しているため、クリーンルーム内での流体輸送や薬液供給装置には不可欠な材質です。

ETFE・PCTFEは耐候性・機械的強度・耐衝撃性に優れているため、航空宇宙・自動車産業で活用されています。特に、ETFEは軽量でありながら強度が高いため燃料ホースや電線被覆に使用され、PCTFEは低温環境でも寸法安定性が高いため宇宙開発や特殊ガスバリア用途に適しています。

ふっ素樹脂の成形方法とは?各材質に適した加工技術を解説

ふっ素樹脂は材質ごとに適した成形方法が異なるため、用途に応じた加工技術の選定が重要です。

PTFEは溶融加工ができないため、モールディングパウダー・ファインパウダー・ディスパージョンなどを用いた特殊な成形法が必要です。一方で、PFAに代表される溶融粘度を改善したふっ素樹脂は、押出成形・射出成形などの一般的な成形方法が適用されます。この章では、各成形法の特徴を詳しく解説します。

PTFE(モールディングパウダー) PTFE(ファインパウダー) PTFE(ディスパージョン) PFA FEP ETFE PVDF ECTFE PCTFE
圧縮成型法(ホットプレス成形含む)
アイソスタティック成形法
ラム押出成形法
ペースト成形法
カレンダリング成形法
含浸コーティング法
押出成形法
射出成形法
トランスファ成形法
回転成形法(ロータリーモールディング)
ブロー成形法(インジェクションブロー含む)

モールディングパウダー

モールディングパウダーはPTFEの粉末を加圧して成形する技術の総称です。

この成形法では熱を加えずに圧縮し、焼結によって固めるプロセスが採用されます。主に、圧縮成型法とラム押出成形法の2種類があります。

圧縮成形法(ホットプレス成形含む)

圧縮成形法はPTFEの粉末を型に入れ、圧力をかけて成形する方法です。ホットプレス成形では、圧力を加えながら加熱することで、より密度の高い成形品を作ることができます。

この成形方法はブロック材やシート材・大型のシール材などの成形に適しており、均一な品質が求められる用途で使用されます。

ラム押出成形法

ラム押出成形法はPTFEの粉末を高圧で押し出し、連続的にチューブやロッド状の製品を成形する方法です。

この成形方法は継ぎ目のない長尺の製品を作るのに適しており、耐薬品ホースや電気絶縁材などの用途に利用されます。

ファインパウダー

ファインパウダーはPTFEをより細かい粒子に凝集した白色粉末を指し、ペースト押出成形法やカレンダリング(圧延)成形法の原料として用いられます。

剪断力を加えると繊維化する性質があり、チューブやパイプ・生テープ・電線被覆などのさまざまな長さの繊維の製造・成形ができます

ペースト押出成形法

ペースト押出成形法はファインパウダーに潤滑剤を混ぜて予備成形物を作り、押出し後に潤滑剤を乾燥・焼成して成形する方法です。

この成形方法は極細チューブやワイヤー被覆などの製造に用いられ、特に電気絶縁材や医療チューブに活用されています。

カレンダリング(圧延)成形法

カレンダリング成形法は圧延機を用いて、ファインパウダーを薄膜に加工する技術です。

この成形方法は連続的なシート状の成形が可能で、フィルムや耐薬品ライニングシートなどに使用されます

ディスパージョン(含浸コーティング法)

ディスパージョンはPTFEを分散液(ディスパージョン液)として利用し、表面に薄膜を形成する技術です。主に含浸コーティング法が用いられます。

その含浸コーティング法はPTFEの分散液を基材(ガラスクロスや金属部品など)に浸透させ、表面に薄膜を形成する成形方法です。この成形方法は耐薬品コーティングや非粘着シートなどの製造に適しています。

押出成形法

押出成形法は熱可塑性ふっ素樹脂を加熱・溶融し、口金を通して連続的に押し出して成形する方法です。

この成形方法はチューブやシート・フィルムなどの製造に利用されています。適用材質はPFA・FEP・ETFE・PVDF・ECTFE・PCTFEと幅広く、PTFEには適用されません。

射出成形法

射出成形法は溶融したふっ素樹脂を金型に流し込み、急冷して成形する方法です。

この成形方法は複雑な形状の部品を大量生産するのに適しており、バルブ部品や電子機器のパーツなどに利用されます。

トランスファー成形法

トランスファー成形法は溶融した樹脂を加圧しながら金型内に流し込み、均一に成形する方法です。

この成形方法は射出成形法と異なり、内部の空隙を減らすことができるため、高精度が求められる機械部品やシール材に適しています。

回転成形法(ロータリーモールディング)

回転成形法は粉末状の樹脂を金型内で回転させながら加熱し、均一な肉厚の成形品を作る方法です。

この成形方法は大型タンクや耐薬品ライニング材などに利用されています。

ブロー成形法(インジェクションブロー成形含む)

ブロー成形法は樹脂を加熱し、型の中に空気を吹き込んで膨らませることで中空成形品を作る方法です。

特に、インジェクションブロー成形は射出成形とブロー成形を組み合わせた技術で、小型ボトルやタンクの製造に適しています。

後加工方法

ふっ素樹脂の成形品は使用環境や用途に応じて後加工(仕上げ加工)を施すことで、より精密な形状や機能性を実現できます。PTFEでも切削や接合技術を活用することで、より高度な部品加工が可能です。

切削加工

切削加工は成形済みのふっ素樹脂(シート・棒材など)を旋盤やマシニングセンタ・複合加工機などの工作機械で削り、目的の形状に仕上げる加工方法です。

ふっ素樹脂は射出成形や押出成形で製造されることが大半ですが、金型成形とは異なり微細な調整が可能なため、高精度な部品(バルブシート・ガスケット・シール材など)や少量生産・試作品では、金型不要でカスタムしやすい切削加工が必要になるケースが多いです。

そのため、切削加工によってPTFEも射出成形や押出成形同様、複雑な形状に対応することができます。バルカーでは表面切削や溝部切削・テーパー加工・ポケット加工・穴加工・裏面ポケット加工・裏面切削・端面加工・外径加工・内径加工・マシニング加工に対応しています。

研磨加工

研磨加工はふっ素樹脂の表面を磨くことで粗さを低減し、平滑性を向上させる加工技術です。

低摩擦特性をさらに向上させるために、摺動部品やシール材に使われるPTFE・PFAの表面仕上げとして使用されます。

溶接・接合加工

ふっ素樹脂は耐薬品性が高いため一般的には溶接が困難ですが、一部のメーカーで溶接が可能です。

PFAチューブとPTFEブロックを溶接するなどして、配管部品を作る際に利用される技術で、化学プラントや半導体産業での利用が多いです。

接着(プラズマ処理後)

ふっ素樹脂は表面エネルギーが低いため通常の接着剤では密着しにくいのですが、シール材・電気絶縁用途としてプラズマ処理やエッチング処理を施すことで、金具や他素材との接着が可能になります。こちらの処理は特にPTFEやPFAの加工時に用いられる手法です。

バルカーにおけるふっ素樹脂の商品ラインナップ

ふっ素樹脂は優れた耐熱性・耐薬品性・低摩擦特性を持ち、多くの産業で活用される高機能樹脂です。バルカーではPTFE(バルフロン®)だけでなくPFA・PCTFE・PVDFの4材質を取り扱っており、用途に応じた最適な材質の提供が可能です。

特に、当社バルカーが製造・販売するPTFE製品「バルフロン®」は従来のPTFEよりも耐クリープ性や耐屈曲疲労性に優れた独自開発品であり、ガスケット・シール材・バルブシートなどの耐久性が求められる用途で高い性能を発揮します。

より詳細な商品ラインナップをご希望の方はバルカー製品情報をご確認ください。

ふっ素樹脂を選ぶ際の注意点とコスト

ふっ素樹脂はさまざまな優れた特性を備えているため多くの産業で利用されていますが、選定を誤るとコストが増大してしまい用途に適さない可能性があります。

この章では、ふっ素樹脂を選ぶ際の注意点とコストに関するポイントを解説し、最適な材料選びのための基準を紹介します。

ふっ素樹脂を選ぶ際の注意点

ふっ素樹脂は材質ごとに特性が異なるため、以下のポイントを考慮して適切な材料を選定することが重要です。

  • 耐熱性・耐薬品性による違いを理解
  • 使用環境(温度・圧力・摩耗)に応じた選定
  • 成形方法の違いによるコスト変動

上記項目の詳細については前述の各章をご参照ください。

ふっ素樹脂のコストを抑える方法

ふっ素樹脂は他のエンジニアリングプラスチックと比べても価格が高い傾向にあります。しかし、適切な選定や加工方法の工夫によってコストを最適化することが可能です。

1. 過剰なグレードを選ばない

ふっ素樹脂のコストを抑える方法として、用途に適したグレードを選定し、不要な高性能材を避けることがコスト削減につながります。

たとえば、半導体・医療用途でなければ高純度グレードのPFAを選定する必要はありません。また、耐薬品性が求められない用途であれば、PTFEの代わりにPVDFやPCTFEを使用することでコストダウンが可能です。

2. 成形方法を適切に選ぶ

成形方法を適切に選ぶことで、ふっ素樹脂の加工コストを最適化することができます。

たとえば、大量生産には射出成形が可能な熱可塑性ふっ素樹脂(PFA・PVDFなど)を選択することがコスト削減に最適です。また、少量&高精度加工であれば切削加工を活用することで金型費用を抑えたり、複雑形状ならトランスファー成形や回転成形を活用することで無駄な材料を削減することにつながります。

3. 加工方法を工夫する

後加工(仕上げ加工)の選択肢を考慮して、材料費と工数を削減することもコストダウンの鍵です。

たとえば、PTFEはブロック材を購入して切削加工するよりも成形時に近い形状にすることで無駄な材料コストを削減することができます

また、接着が不要な場合はネジ切りや機械的な固定方法を活用することで追加の加工費を削減できます。

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編集者

バルカー編集部

カテゴリー

エンジニアリングプラスチック, ふっ素樹脂

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