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ゼロからわかるPTFE(テフロン)と切削加工

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優れた耐熱性・耐薬品性・非粘着性など、さまざまな性質によってますます評価が高まっているPTFE。
しかし、「どのような素材か?」「どのような加工方法で作られるか?」「調達するうえで注意すべきことは?」といった疑問を持たれている方が少なくありません。
そこで今回は、PTFEを知るファーストステップとして、バルカーの高機能樹脂担当スタッフが特性や活用方法をわかりやすく解説します。

ふっ素樹脂とは?PTFEとは?

ふっ素樹脂はアメリカの総合化学会社、デュポン社のプランケット博士が1938年に発見した素材です。
多くの樹脂が石油から作られていますが、ふっ素樹脂は主に中国やロシア、インドなどで採られる蛍石(ほたるいし)を原料としています。
この鉱石を硫酸で精製してふっ素ガスを取り出し、パウダーにすることで、さまざまな製品に加工することができます。

しかし、質の高い蛍石が容易に入手できないことや精製できるプラントが限られているため、日本国内の流通量は樹脂全体の3%と低く、価格も他の樹脂に比べてやや高めです。

樹脂は通常、アルコールや酸に弱く、溶解してしまう可能性がありますが、ふっ素樹脂はほとんどの薬液にふれても変化しません。
また、耐熱性、絶縁性、非粘着性、低摩擦性、耐候性にも優れています。そのため、薬品を扱っていたり、高温であったり、滑り性を求められるような製造環境や製品によく使用されています。

PTFEならではの特性と用途例

ふっ素樹脂とはふっ素原子を含む合成樹脂の総称です。PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、そのひとつ。ふっ素樹脂の代表的な素材で全需要の約60%を占めていて、切削加工品の最もポピュラーな材料です。

PTFEは「テフロン」とも呼ばれていますが、これはデュポン社の商標(現在、この商標はケマーズ社に移管)。バルカーでは「バルフロン®」という名称でPTFE を製造・販売しています。
PTFEは以下のような特性を備え、その特性ゆえに他の素材では困難な状況でも活用されています。

耐薬品性(用途例:半導体製造工場)

どのような薬品にも反応しない化学的特性を備えているため、近年、特に半導体製造現場の需要が飛躍的に伸びています。
半導体の製造において、ウェハ上にパターン回路をつくる工程は化学処理(洗浄処理など)で行われ、目的に応じて強酸や強アルカリ、溶剤といった多数の薬液を使用します。薬液に微量でも不純物が混入するとウェハ上の微細な回路パターン形成の障害となり、不良品が発生します。

このようなトラブルを避けるために、薬液を貯蔵するタンクや配管、ポンプやバルブの内側や薬液が接触する部分などにPTFEが内張りライニングされています。

耐熱性(用途例:食品工場)

連続使用で260度、一時的であれば300度の熱にふれても分解しません。これほどの耐熱性がある樹脂はPTFEだけです。
そのため、パンを焼く工程のベルトコンベアーなどの高温の環境で活用されています。

非粘着性(用途例:フライパン、炊飯器の釜のコーティング)

粘着物がつきにくい性質があります。この特性と耐熱性から、フライパンや炊飯器の釜のコーティングなどに活用されています。
高温で調理しても破損せず、お米や具材がこびりつくこともありません。

低摩擦性(用途例:機械の回転軸部分)

PTFEは樹脂の中で最も摩擦係数が低く、潤滑性が高い素材です。その特性を利用してモーターなどで回転する軸部分に使われています。
一般的に、このような機能はベアリングが担いますが、「複雑な構造にしたくない」「潤滑のためのオイルを使用したくない」といったニーズにPTFEは応えます。

電気的特性(用途例:レーダーの基盤材料、絶縁材料)

誘電率が高く、送電ロスがほとんどないため、ミリ波レーダーの基盤材料などに使われています。
一方で絶縁材料としても優れ、高電圧の電気を遮断することができるので、充電設備や発電所でも活用されています。

耐光性(用途例:屋外のプラントのシール材)

紫外線の影響をほとんど受けないため、何十年太陽光を浴び続けても劣化しません。
そのため、屋外の貯蔵タンクの液漏れ防止用のシール材などに活用されています。

PTFEの主な加工方法

一般的に、樹脂を同じ形状に大量に加工する際は、金型を作り、樹脂を溶かして流し込み、冷却して固めて取り出すという射出成形(インジェクション成形)という方法が採用されます。

しかし、PTFEは溶融粘度が高く、他の樹脂のように加熱しても液体化しないため、この方法は適していません。
原料のパウダーをブロックや丸棒形状に圧縮成形して焼き固め、これらを機械で削り出す切削加工という方法で目的の形状にしていきます。
この切削加工には、大きくわけて2種類の方法があります。

マシニング加工

素材が固定され、工具(刃物)が回転して素材を削っていく方法で、主にブロックや板物形状に適しています。
縦に動くZ方向、横に動くX方向、奥行きに動くY方向の3軸に動かすことができ、必要な工具が自動で交換されます。

フライスや中ぐり、穴あけといった切削を事前にプログラムで設定し、図面どおりの形状にしていきます。3軸にテーブルの回転の2軸を加えた5軸加工機もあります。3軸では難しい湾曲を描くような複雑な形状を切削でき、人手で位置を変える必要がないので生産効率も上がるという点で注目されています。

旋盤加工

陶芸のろくろのように、素材が回転して工具(刃物)を当てることで削っていく方法で、主に円や筒形状の加工に適しています。
通常、コンピュータで数字を制御できる装置を備えているNumerical Control(数値制御)旋盤という機械を使用します。

このNC旋盤にマシニング加工のような回転工具を備えつけ、フライスや穴あけができるようにしたものを複合旋盤といいます。複合旋盤であれば、5軸加工機のような作業効率と品質の向上が図れます。

お客様の課題やお悩み

バルカーはPTFEを中心に、約70年間ふっ素樹脂加工品を供給してきました。その間、お客様のさまざまな課題やお悩み、ニーズと向き合ってきました。現在は以下のような声を聞くことが多くなっています。

依頼先を決めるまでの負担が大きい

新しくPTFEの加工を依頼する、あるいは現在の調達状況に難があるために新しいサプライヤーを探さなくてはならなくなったとき、品質の監査のために工場の加工現場を視察したり、サンプルを作って出来栄えを見る、といったプロセスが必要な場合がある。そのための時間や労力の負担が大きい。

見積りを取るまでの負担が大きい

サプライヤーを選定した後、見積りを取るために図面を送ったり、工場や担当者と連絡を取る必要がある。そのための時間や労力の負担が大きい。
さらに相見積りを取る場合、その負担はサプライヤーの数に比例して増える。

半導体市場に占有されて調達が難しい

現在、半導体市場が活況を呈していて、自然と調達量の多いメーカーに、より多くのPTFEを占有される場合がある。そうなると必要な量や使用頻度がそれほど高くないユーザーが容易に入手できなくなる状況になりやすい。

このような課題やお悩み、ニーズを解決するためにQuick Value™があります!

調達・注文・使用の際の注意点

高性能で用途も広いPTFEですが、扱うにあたっていくつかの注意点もあります。
ここではそのなかで特に注目していただきたいポイントを挙げます。

線膨張〜使用時の温度にあわせた設計

PTFEは線膨張(温度が変化することによって物質の大きさが変化すること)が大きい樹脂です。低温時に収縮し、高温時に膨張します。
23℃あたりに体積が変わる転移点があり、ここを上下することで1〜2%増減します。そのため、お客様が使用される環境温度が低いと加工品が「装置に合わない」、高いと「装置に入らない」といった不具合が生じる可能性があります。

バルカーは検査時の温度を25℃±2℃で規定しています。PTFEを使用される環境は同様の温度に設定いただくことをお願いしています。
「どのくらいの温度で、どれほど変化するか」は、線膨張係数というデータをQuick Value™のホームページに掲載しておりますので、設計の際はぜひ参考にしてください。

摺動状態の摩耗に注意

PTFEは摩耗しやすい材料で他のパーツとのこすれが生じたり、常に摺動している環境で使用しているとPTFEは摩耗やクリープ(変形)が生じやすくなります。不具合が発生する前にチェックして交換する必要があります。
また、このような環境下で使用する際は、グラスファイバーやカーボンなどをPTFEに混ぜて摩耗強度を高めることもできます。これを「充填材入りPTFE」といいます。

バルカーは「充填材入りPTFE」のご注文に対応しています。工程としては、お客様から充填材とその混合量を指定いただくパターンと「こういう用途で使いたい」というご相談から、バルカーが設計内容を提案。試作品をお客様の実機で確認いただいた上で生産するというパターンがあります。

PTFEの切削加工を依頼するならQuick Value™

Quick Value™は、バルカーが運営する、WEB上でPTFEの切削加工品の見積りの取得から、発注・調達までできるサービスです。
これまで人を介して行われてきた作業をDXで実現。圧倒的なスピードと利便性でものづくりの現場に貢献します。

老舗メーカーならではの確かな品質と対応力

バルカーはPTFEを中心に、約70年間ふっ素樹脂加工品を供給してきました。その実績に裏打ちされた基準をQuick Value™に参画しているサプライヤーにも求め、徹底した品質管理を行なっています。
さらに、さまざまな強みを持つサプライヤーがいることで多様な技術力を発揮。メーターサイズの加工品や溶接を含む複雑な形状のオーダーにも幅広く対応します。

編集者

バルカー編集部

カテゴリー

PTFE, 切削加工

タグ

PTFE, テフロン, 切削加工, 加工方法, 材料特性, 樹脂

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